輪島・宅田 食卓彩り 心に安らぎ
輪島市宅田町の仮設住宅の玄関前に鮮やかな紫色のチューリップが咲いていた。十本余りが風にしなやか
に揺れる。ガーデニングが趣味という表野千鶴子さん(53)の居室だ。
「珍しいでしょう。カタログで取り寄せたんです」と千鶴子さんが紫色のチューリップを指さす。震災で半壊した築五十年の同市鳳至町上町の自宅には、花壇があった。空きスペースに作った二坪ほどの広さで、十種類以上が花を次々とつけて、季節ごとに安らぎを与えていた。
仮設住宅に移った今も毎日、千鶴子さんは壊れた自宅へ向かう。輪島漆器会館のパート勤めの帰りに自転車で立ち寄り、食器や調味料など足りない物を取ってきては、仮設住宅に運ぶ。住めなくなってしまっても自宅がやっぱり気になる。大事にしていた花壇も必ずチェックする。
「昨日、庭で取ってきたカラーです。ブラウスのえりに似てるかな」。仮設住宅の食卓のコップに生けた白くかれんな花を見やりながら、千鶴子さんはほほ笑んだ。
千鶴子さんは、輪島市の道下郵便局長を務める夫の武さん(57)と二人暮らし。地震が発生した直後から、武さんは職場の復旧に追われた。自宅の片付けはもっぱら千鶴子さんが担い、仮設住宅への引っ越し作業も金沢市から手伝いに駆けつけた二男(22)と二人で何とかこなした。
新しい住まいを整えるのも千鶴子さんが中心。自宅から持ってきた食器を洗うと、トレーに山盛りになった。「狭くて物を置く場所は少ないけど、食器棚は必要ね。たんすや、げた箱とか徐々にそろえば、何とかなりますよ」
自宅は、はりが折れ、柱と床が傾いた。知人の大工に見積もりを頼むと、修理するのも建て直すのも、ともに一千万円以上かかるという。夫妻はせっかくお金をかけるなら新しい家をと再建を決意した。
千鶴子さんは「借金することになるでしょうが、お金の面は夫に任せています」と武さんに全幅の信頼を寄せる。「今度家を建てたら、ちゃんといい庭を作れる。それが楽しみ」とも。
武さんは「こうして寝る所があるから大丈夫。仮設住宅は居心地がいいし。どうやってお金を工面するか、これから考えます」と応じる。
「古い家だったから、いずれは建て直さなくてはいけなかったからね」。千鶴子さんは自分たちに言い聞かせるようにつぶやいた。
(七尾支局・増井のぞみ)
◇宅田の仮設住宅◇ 輪島市の自衛隊官舎跡地に、20戸が建設された。2DKが12戸で、1DKと3Kがともに4戸。市役所から車で1、2分の市街地で、上野台中学校付近の丘の中腹にある。15戸に入居が決まっており現在は、鳳至町、河井町の住民を中心に14世帯34人が住む。
(中日新聞・2007,5,31)



に揺れる。ガーデニングが趣味という表野千鶴子さん(53)の居室だ。
ボランティアが駆け付け、献身的な活動で住民を物心両面から支えた。地震発生から二カ月が過ぎ、片付け作業などがひと段落し、依頼件数も少なくなったためセンターを閉じることにした。
能登半島地震で宿泊客が減少しているとして和倉温泉と輪島温泉の旅館の女将(おかみ)たちが九日、石川県に対し、風評被害の対策を要望した。



